自然は弱肉強食。野生の生きものたちの命のやり取りの跡を見つけました。
タイトルのプレデターは、捕食者という意味。今日は、やまさぁーべの昇降口でちょっと珍しいものを発見。苔むした庭石の上に大量の鳥の羽が散っていました。鳥が、何者かに襲われて食べられた跡です。羽の散り具合から見ると、タカの仲間が襲ったようです。タカは、鳥を獲物として捕まえると羽を綺麗にむしってから巣に運んでヒナに与えたり、落ち着く場所でゆっくり食べたりします。とがったくちばしでむしるので、羽は塊ではなく一本一本バラバラに近い状態で円形に散らばるのが食痕の特徴です。キツネやイタチなど獣の食痕では、羽が束で引き抜かれて落ちています。
大きく見えるのは翼に生えていた風切羽という羽です。先の方が茶色くなっていますが、これはキジバトの特徴です。おそらく、クマタカが襲ったのだと思います。
こちらも自然界の強力なプレデターです。スズメバチの女王です。一般に、ハチと言えば黄色と黒のイメージですが、このスズメバチは茶色いですね。その名もチャイロスズメバチといいます。幻のスズメバチなどと呼ばれることもある、珍しいハチで関東地方などでは絶滅が心配されています。このチャイロスズメバチ、ちょっと変わった習性を持っています。キイロスズメバチやモンスズメバチなどの巣を襲って女王蜂や働き蜂を殺し、巣を乗っ取るのです。殺さずに残された幼虫は、その後羽化して成虫となり、チャイロスズメバチの働き蜂として行動します。チャイロスズメバチは他種のスズメバチを奴隷として使うわけですね。生物学的には「社会寄生」と呼ばれる習性です。
なお、スズメバチは捕まえたバッタやセミなどの肉で作った肉団子を餌として幼虫に与えます。大きな巣では数千匹の幼虫が育てられているので、その獲物となる昆虫の数は膨大ですね。まさにプレデターです。
今日の話題、あえて少し残酷に響くような書き方をしてみました。でも、彼らは自然界の中で重要な役割を持っています。
例えば、危険生物として嫌われがちなスズメバチ。でも彼らがいなければバッタやいも虫が増えすぎて、農作物や街路樹などの虫食い被害はとても増えることでしょう。その分、農薬をたくさん使わなければいけない事態になるかもしれませんね。チャイロスズメバチがいなければ、軒下に作られるキイロスズメバチの巣が増えます。そうなれば人が刺される事故がさらに増えることでしょう。子どもたちに人気のカブトムシやクワガタは樹液を食料としていますが、その樹液が出やすいようにカミキリムシのかじり跡をさらに広げる役割を持っているのがスズメバチだったりします。スズメバチがいなくなったらカブトムシやクワガタもいなくなってしまうかもしれません。
私たち人間も、スズメバチの恩恵を受けていることがあるわけですね。メディアでは「殺人蜂」なんて表現されることもある生きものですが、できれば一方的に悪者にはしたくないものです。